「ほらギル!そんな所で寝てたら風邪引くよ!さっさとベッド行って寝たら?」←私。

が連れて行ってくれよー。そしたら其処であんな事やこんな事もついでに出来るだろー」←ギルベルト。

「兄さんそれは許さないぞ。何故ならは俺のものであって決してそんな不純な行為を俺の」←ルートヴィッヒ。

「あのー疲れてるんで突っ込みはしたくないんですけどね」←疲弊状態の少女

「突っ込むとかそんな厭らしい表現すんなよ!俺様興奮しちゃうぜー」←酔っ払いの孤独青年

「兄さんそれは許さないぞ。何故ならは俺のものであって決してそんな不純な行為を俺の」←泥酔状態の彼氏

「いい加減にしてくれますか野郎共。放っといてこのまま冷たい床で眠らせるのもいい対策だと思いますけどね」←対策がそれしかない。

「熱い俺の身体を冷ませるのはお前だけだぜヒュー」←もうこいつどっかいっちゃえばいいのに。

「兄さんそれは許さないz」←君は蓄音機か。




ビール樽を毎日破裂させてそれを飲み干す程に飲酒する酒好き兄弟は今日も泥酔状態。呼んで字の如くデロンデロンベロンベロンな二人は、大きなソファに寄りかかったまま動こうとしない。
攻防が何度続いたことか。もう時計の針は一日の終了時刻を大幅に過ぎているというのに。私は早くこやつらを片付けて就寝したいのだ。
私がいちいち彼らの言葉に突っかかるときりがないので口を噤むと、ギルはそれを「負けました」の合図にしたのかどっかりとソファに座り直って大いに寝始めた。


殴りたかった。ビール樽の破片とかで思いっ切り頬を掻っ攫って行きたい気分だった。


しょうがないからもう諦めて蓄音機状態のルートを片付けることに専念しようと、ルートを見遣る。
誰に向かって話をしているのかは不明だが、空のビールジョッキを握り締めてぶつぶつと何かを繰り返し呟いていた。


「ほらルートさん、ダメっすよ明日仕事なんじゃないんスか。二日酔い決定ッスよ早く寝ましょう。」
「ん………どうしたそんな目で見つめて」


はい?と聞き返したくなるような言葉に耳を疑う。別に私はそんな目をした覚えもないし、ルートを見つめたわけでもなかった。
酔うと幻覚まで見えてくるのだろうか。酒に弱くて良かったと心から思った。
「おい」聞いてるのか、とルートは私の腕を強く掴んで引き寄せる。ぐんとルートに近付いた私の顔は、むっとした熱気とアルコールの臭いに包まれる。
眠いのか、とろんとした目が私を捉えた。整ったシャープな輪郭にくっついた鼻が、すうと私の頬を撫でる。
ちゅっとリップ音を立てて軽くキスをくれたルートは、頬を染めて私を見ていた。


思わず理性を飛ばされそうになりながらルートの手を振り解こうとするも、流石はドイツのゲルマンさん、力強さはピカイチだった。
ぐいぐいと腰にまで力を入れて腕を引いているのに、全然解ける気配は無い。


ついにルートが酒臭い顔を私の首元に埋めてくる。まずい、このままだと完全に流される。



「ルートダメだって。ギルが見てるじゃんか。そそそんなことしたら起きちゃうよってうわぁああ」

ふうと耳に息を吹きかけられてぞわり総立ち鳥肌。ぶるりと身体を震わせると、ルートは面白げににっと笑った。

「可愛いな、は………」
「笑ってる場合じゃないでしょ馬鹿ですか。早く寝室に行って寝てください。」
「ん……が居れば、いい……」
「だからあたしがよくねーんですよ!お願いだから寝て!普通に寝て!」


ソファに寝転がるギルベルトに目を遣りながら、もう片方の手でルートの額をばしばしと叩いた。
不快そうに首を振って手をはらうルートは、折れたのかふうと溜息をついて立ち上がる。やっとか、と安堵の溜息を吐こうとしたのも束の間、手首はまだ彼の手の中にあった。
結構な力で引っ張るルートに大人しく着いて行かされたそこは紛れも無い寝室。もしかしてここでするとか言い出さないでしょうね、と不安がよぎる。

背中を押されて強引にベッドに寝かされた。ルートは無表情(というか酔いきった目)で私を見つめている。


「い、いいいいやだー!けだもの!あたしは酔った勢いでしちゃいましたー的な流れは嫌いだぞぉ!どうせならまだ意識が少しあって罪悪感あるけど抱かれろとかそういうシチュエーションの方があぁいいですよううぅ!ついでにそれは私の片思いの場合限定ね!あ、わああああああ!」

………大人しくしろ」


勝手なことを言っている間にもルートは180の巨体を本気で倒してくる。潰される…!と恐怖の念に駆られてベッドを回転移動し、なんとか棒倒し攻撃を逃れるも逞しい腕が伸びてきて私の身体に巻きついた。うごおおおと女性らしくない声が腹の底から出て、羞恥に叩かれる。それでもルートはそんなことおかまいなしで、色っぽい顔で私の理性を崩そうと躍起(に見えるだけ)である。


………」

「っあ、わ、わ、ルルルルルート…!…………………、…、……………………、…」


囁かれて近づけられた唇は私の唇にまで到達することは無かった。寧ろ私の顔の前にあったのはルートの厚い胸板で、顔面は少し上のほうにある。
見上げると、彼は静かな寝息を立てて心地良い眠りに入っていた。

「………………うーん」

少しの物足りなさを感じる私を痛々しく思いながら、私の頭を抱いて離さないルートの腕の中で蠢く。
もぞもぞとシーツの上で腕を動かすと、小さな声でううん、と唸りながら身を捩った。相変わらず腕はきつく私を抱きしめたままだけれど。
頬を赤く染めたまま目を閉じて眠るルート。顔は整っていて綺麗なので寝顔もすっきりとしているが、能面の様に仏頂面なのが凄く気に掛かる。


……………」


さらにぎゅっと締められる。「ぐぇ」蛙が潰されたような声を出しながら怪力に負けじと対抗しているも、名前を呼ばれて少々照れる。
夢の中でも私と言い争っているのだろうか。こうして抱きしめてくれることは嬉しいほか無かった。


「ルート」


小さく名前を呼び返して広い背中に腕を回す。幸せそうに口角を上げて表情を変える彼に私も釣られて頬を緩ませた。
普段厳格で真面目な彼が笑顔を見せることなど、滅多に無いものだった。可愛いものだ、と男性の形容詞には些か相応しくない言葉が頭をよぎる。


酔うといつも強引だけれどたまにはこういうのもいいか、と胸板に顔を埋めて、私も意識を布団の中へと沈めていく。